相続の承認・放棄をするまでの間、相続財産の管理はどうするの?
相続人は、自らの財産と同程度の注意を持って相続財産を管理する必要があります
相続は故人の死亡によって開始し(民法882条)、相続人は相続開始の時から故人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条本文)。
もっとも、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内は、限定承認または相続放棄することも認められている(民法915王1項本文)ため、この間は、相続財産の帰属は不安定となります。
そこで、法は、相続人へ、この間も自己の固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理することを定めました(民法918条1項本文)。
相続財産の「保存」、「利用」、「改良」はできますが、「処分」はできません
相続人は、相続財産の管理行為として、「保存」、「利用」、「改良」を行うことができます。たとえば、相続財産の修理(保存)や使用貸借に供すること(利用)、軽微な造作の施し(改良)などです。
しかし、「処分」を行ってしまうと単純承認したものとみなされます(法定単純承認 民法921条1号本文)。
管理行為と処分行為の線引きが微妙なことも少なくありませんので、相続放棄の可能性が高い場合(相続財産が債務超過の場合など)は、慎重な対応が求められます。
相続人が複数いる場合、相続財産は共同相続人の共有となり、共同相続人全員で管理することとなります
相続人が数人ある時は、相続財産は、その共有に属することが定められています(民法898条)。この「共有」の性質は、民法249条以下に規定する「共有」と性質を異にするものではないと解されています(最判昭和30年5月31日 民集9巻6号793頁)。
そのため、相続人が複数いるときは、相続財産の保存行為は各相続人が単独で行うことができます(民法252条但書)、その他の管理行為(利用・改良)については相続分の過半数によって決することになります(同条本文)。
相続財産管理人が選任されることもあります
相続人が相続財産所在地から遠方に居住している場合や共同相続人間の対立が激しい場合など、相続財産の適正な管理が難しいことも考えられます。
そこで、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって、「相続財産の保存に必要な処分」(民法918条2項)として、相続財産の管理人を選任することができます(同条3項)。
相続財産管理人が相続財産を管理するのは、相続人が確定するまでの間であり、相続人確定後は相続人自身が相続財産を管理することになります。
参照記事
遺言書に関する疑問は「遺言書Q&A」をご覧ください。
相続に関する疑問は「相続Q&A」をご覧ください。
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