視覚機能、言語機能、聴覚機能に障がいがあっても、遺言書を作成できる?
公正証書遺言であれば問題なく作成できます
自筆証書遺言も作成できますが、視覚機能に障がいが認められる場合、一定の要件が課されており、後々トラブルになる恐れは相対的に高いと考えられます
公正証書遺言
公正証書遺言の作成にあたっては、遺言者が、遺言の趣旨を公証人に「口授」し、公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者と証人に「読み聞かせ」または「閲覧」させる必要があります(民法969条2・3号)。
ただし、言語機能に障がいのある方の場合、通訳人の通訳により申述すること、または、自署することで「口授」に代えることが認められています(民法969条の2第1項)。
また、聴覚機能に障がいのある方の場合、通訳人の通訳によって伝えることで「読み聞かせ」に代えることが認められています(同条2項)。
さらに、視覚機能に障がいをお持ちでも、「口授」「読み聞かせ」は支障なく行えると考えられますので、視覚機能、言語機能、聴覚機能に障がいをお持ちの方でも、公正証書遺言は問題なく作成できます。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が、全文、日付、氏名を自書し、押印する必要があります(民法968条1項)。そのため、自筆証書遺言を作成するに当たっては、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力、すなわち自書能力を備えていることが求められます。
言語機能、聴覚機能に障がいが認められても、自書能力は認められると考えられますが、視覚機能に障がいがある場合、問題となります。
この点について、判例は、「全く目の見えない者でも、文字を知り、かつ、自筆で書くことができる場合には、仮に筆記について他人の補助を要する時でも自書能力を有するというべきであり…」と条件付きながら自書能力を認めています(最高裁判決昭和62年10月8日 民集41巻7号1471頁)。
ただし、視覚機能に障がいのある方が自筆証書遺言を作成する場合、字の間配りや行間を整えるために、他人から添え手を受けることがありますが、これについて判例は「添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できる場合には『自書』の要件を充たすものとして有効であると解するのが相当である」(最高裁判決昭和62年10月8日 民集41巻7号1471頁)として、添え手による自書に一定の要件を課しています。
そのため、言語機能、聴覚機能、視覚機能に障がいのある方であっても、自筆証書遺言を作成することは可能ですが、視覚機能障がいの場合、一定の要件が課されており、作成した自筆証書遺言がトラブルになる恐れは相対的に高いと考えられます。
参照記事
◆遺言書に関する疑問は「遺言書Q&A」をご覧ください。
◆相続に関する疑問は「相続Q&A」をご覧ください。
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