遺言書の種類
これまで見てきたように、遺言書には単純な「ケーキの切り分け」にとどまらない法律上の効果が認められています。
そのため、遺言書の作成は法律の定める方式に従わなければ無効となります。
この遺言書の方式のうち、主に利用されているのが、本人が全文を自筆で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人が作成する「公正証書遺言」です。以下、この2つについて見ていきましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言の最大の特徴は、遺言者本人が、全文を自筆で書いて作成するという点にあります。
そのため、長い文章には不向きであるといわれています。また、多くの場合、遺言書は自分で保管することになります(相続人や第三者に預けることもできます)。
この方法の良いところは、
○自分で手軽に作成できる
○費用が低額
○気軽に書き直しができる
○遺言の存在と内容を秘密にできる
という点にあります。
反対に欠点として
×方式の不備で無効になる恐れがある
×偽造・変造の恐れがある
×紛失・隠匿の恐れがある
×家庭裁判所での検認手続きが必要(相続人に手間と時間をかける)
×相続人間のトラブルが発生しやすい(無理やり書かせたのではないか…など)
という点が挙げられます。
なお、当HPの「遺言書の書き方」は自筆証書遺言について記載しています。
遺言書の作成方法についてお悩みの際には、当事務所の無料相談又は各専門家へお尋ねください。
公正証書遺言
公正証書遺言の最大の特徴は、公証役場で公証人が作成するという点にあります。遺言者は、遺言の内容を公証人に伝え、公証人の作成した遺言書に署名し押印するだけで済みます。
この方法の良いところは、
○形式の不備で無効になる恐れがない(公証人が作成するので)
○紛失や偽造・変造の恐れがない(公証役場で原本を保管するため)
○家庭裁判所での検認手続きが不要(相続開始後、直ちに遺言の内容を実現できる)
という点にあります。
他方、欠点として
×公証役場の手数料がかかる
×証人2人を手配しなければならない
×作成するまでに時間を要する(公証人との打ち合わせ、証人等の日程調整)
という点が挙げられます。
公正証書遺言における公証役場手数料の目安
公正証書遺言作成における公証役場手数料は、相続人の人数と具体的な相続分によって変わってきます。
①妻と子供2人、②妻と子供1人が法定相続分に基づいて夫の遺産を法定相続した場合の、相続財産の価額に応じた公証役場手数料の目安は以下の通りです。
遺産総額 |
妻と子供2人 |
妻と子供1人 |
---|---|---|
500万円 |
36,000円 |
33,000円 |
1,000万円 |
44,000円 |
33,000円 |
2,000万円 |
50,000円 |
45,000円 |
3,000万円 |
68,000円 |
57,000円 |
5,000万円 |
80,000円 |
57,000円 |
7,000万円 |
86,000円 |
69,000円 |
1億円 |
86,000円 |
69,000円 |
2億円 |
101,000円 |
86,000円 |
3億円 |
142,000円 |
112,000円 |
5億円 |
194,000円 |
164,000円 |
※祭祀主催者を指定する場合には11,000円加算されます。
※正確な金額は公証役場にお尋ねください。
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
---|---|---|
作成方法 |
本人が全文を自筆で書く | 公証人が公証役場で作成する |
費用(※) |
あまりかからない(紙代、インク代) | ある程度(公証証書手数料、証人日当等) |
証人 |
不要 | 必要(2人) |
保管 |
遺言者本人が保管 | 公証役場で保管 |
検認手続 |
必要 | 不要 |
長所 |
費用があまりかからない |
方式の不備で無効になる恐れがない |
短所 |
方式の不備により無効となる恐れがある |
費用がかかる |
※専門家に依頼する時は別途報酬が必要となります。
どちらが多い?
では、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらが多いのでしょうか。
結論としては、公正証書遺言の方が圧倒的に多いといえます。
平成26年の公正証書遺言の作成件数が104,490件であるのに対して、同年の家庭裁判所における遺言書の検認件数が16,843件となっています。
このデータは、
・公正証書遺言は作成時の件数であるのに、遺言書の検認は相続発生時(=死亡時)の件数である
・遺言書の検認件数には、自筆証書遺言以外の方式の遺言も含まれている
・自筆証書遺言のなかには紛失したもの、隠匿されたものも存在する
という点を考慮する必要がありますが、6倍あまりの違いがあるため、公正証書遺言の件数が多いと考えられます。
参照記事
◆遺言書に関する疑問は「遺言書Q&A」をご覧ください。
◆相続に関する疑問は「相続Q&A」をご覧ください。
◆遺言書の添削・作成支援を30,000円(税抜)~お受けしております。
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